スノーボードの歴史
スノーボードの歴史には諸説ありますが、書籍等に正しく明記された形で残っているものはありません。しかし、スノーボードの定義を「一枚の板で雪上を滑る」とすると1900年代初頭、主に狩猟や山登りの際、深雪を楽に滑り降りる道具として販売されていました。また、1960年代後半にはソリの上に立って遊んでいた子供達がいるとされています。その頃の板は現在のスノーボードに比べると曲がる事も出来ず、単に雪面を滑り降りるものでした。
1970年代前半になるとスケートボードの車輪(ウイール)の代わりにソリのような滑走体を取り付けて雪面を滑走するものや、合板やプラスティックで作られたボードが販売されました。またサーフィンの様にフィンが付いているものもありました。この頃のボードにはスチールエッジなどはなく、深雪や柔らかい雪の上を滑る遊び道具に過ぎませんでした。その乗り方やフィンが付いていたことなどから、スノーサーフィン、スナーファー(商品名)、スノーボードなどと言われていました。
日本でも1970年代前半になると、サーフボードで雪山を波に見立てて滑ったりした事もありました。
やがてプラスティック製のボードが開発されました。海外と同じ様に、主に柔らかい雪を滑る道具でした。1970年代後半には、スチールエッジや高分子プラスティックソールなどスキーと同様の材料が採用されるようになり、ボードとブーツを連結するバインディング、それに使用する専用のブーツなどの改良によってアイスバーンや圧雪バーンなどゲレンデで良く見られる雪面状況でも滑れるように急速に改良されました。それに伴い競技への関心も高まり、近年では世界的に普及し、ウィンタースポーツの一つとして代表される様にオリンピックの正式種目となりました。
「スノーボード」という名称は米国とカナダを中心とした北米スノーボード協会の発足時、サーファインでもスキーでもない、まったく新しいジャンルのスポーツとして「スノーボード」という名称に統一したことに始まります。この協会により競技会が開催され日本でもヨーロッパ各国においても次々と協会組織が設立されました。
日本では日本スノーボード協会が1982年に発足し同時期に日本スノーサーフィン協会も発足しました。同年秋田県協和スキー場で北米スノーボード協会の前年度チャンピオンを招き第1回全日本スノーボード選手権大会が開催されました。その後1987年に日本スノーボード協会が日本スノーサーフィン協会を吸収合併、国内の活動を一元化し各地区大会、全日本選手権大会を毎年開催、新しい滑走技術の向上に努め、急速に改良される用具とともに発展してきました。
1989年にはヨーロッパ、米国でワールドカップが開催され、1989年ヨーロッパ、米国、日本の各国によりISF(国際スノーボード連盟)が発足、世界的な協力関係が始まりました。日本でも1990年に北海道ルスツリゾートスキー場でワールドカップシリーズの1戦が開催せれたのを皮切りに、毎年ヨーロッパ、米国、日本において数戦行われるようになりました。そして、それらの大会における総合得点でワールドチャンピオンが決定されるに至っています。また、1998年長野オリンピックではスノーボードが冬季オリンピックの種目として正式採用されました。現在ではISF(国際スノーボード連盟)にかわりWSF(世界スノーボード連盟)が発足し日本では日本スノーボード協会が加盟しています。
スノーボードは競技スポーツとしての面が先行してきましたが、日本スノーボード協会では設立目的でもある「健全な普及」をより推進する為に、1985年から教育本部で指導者の育成を主眼としたインストラクター制度を始めました。これにより数多くのスノーボードインストラクターが生まれ、全国各地でスノーボードスクールが開校され、技術やマナーの向上と普及に貢献してきました。また、安全な滑走技術をより広く浸透させることとバッジテスト、インストラクター検定などの基本となる技術書物の公な刊行が望まれ、1993年11月に「JSBAスノーボード教程」の初版が発行されました。
日本スノーボード協会ではより高い滑走技術の研究、評価、習得を目的とし、1994年3月バッジテスト1級、2級、インストラクター資格者を対象に第1回テクニカル選手権大会とデモンストレーター選考会を開催し、これにより国内初のスノーボード、デモンストレーターが誕生しました。
将来への展望
スノーボーダーの急増傾向も止まり、このスポーツは確実にメジャー化の道を進んでいます。用具の進歩、ゲレンデの開放、スキー関係者の理解など、ますますスノーボードが共存できる状況になっています。
スノーボードは優れた可能性を秘めたスポーツです。急成長期には初心者の転倒事故などが増えましたが、ここ数年減少傾向にあります。昨今では2世代に通じた愛好者も多く、親子でスノーボードを楽しむ傾向が良く見かけられます。ここで一過性のスポーツでは無く、次世代に続いていく事を確信しました。
今後はスノーボード界の将来を維持していくためにジュニア、ユースの育成も重要な課題のひとつになっています。地域に密着した形で各地区協会がその地域に沿った運営を求められています。行政教育課、体育協会、スポーツ少年団など関連の組織と連携を図り、同時に青少年の育成にも貢献していかなくてはならないと考えています。まだまだ新参者のスノーボーダーが社会のルールを理解し守ることで、スノーボードの明るい未来が訪れることになるでしょう。